ITサービス / 第6章・全8章

AIと共存する将来の仕事を考える

技術で減る作業と、業務として残る責任を分け、条件付きの見通しを立てます。

約15分 / 内容確認日:2026-10-31

この章の将来シナリオは、資料で確認できる動向を踏まえた編集部の条件付き分析です。実現が決まった事実とは分けて読んでください。

作業の自動化と仕事全体の変化を分ける

AIが文章やコードを生成できると、下書きや調査、実装の一部に必要な時間が変わる可能性があります。しかしシステム開発には、顧客の目的を理解する、仕様を決める、既存の仕組みとの影響を調べる、正しく動くと確認する、利用後に改善するという仕事もあります。ある作業が速くなることを、そのまま職種全体が不要になることへ置き換えないようにします。

一方で、責任が残るという理由だけで仕事の内容が変わらないと考えるのも適切ではありません。作れる量が増えれば、レビュー、評価、運用、データ管理の負担や方法も変わります。顧客が要求する納期や価格が変わる可能性もあります。技術を使う側と提供する側の両方で、何が速くなり、どこへ時間や費用が移るかを考える必要があります。

IPAの「DX動向2026」は、AIの活用だけでなくガバナンス、組織体制、人材も調査の範囲として示しています。この構成からも、技術の導入と事業上の活用を別の論点として調べる必要があると読み取れます。ただし、この調査の構成だけからAIによる雇用の増減や個別職種の将来までは判断できません。企業の実際の開発体制と成果を確認し、どの作業や役割が変わっているかを具体的に考えます。

参照資料:「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるかデジタルスキル標準

拡大・価格圧力・統制重視のシナリオ

ここからの見通しは、編集上の学習用シナリオです。拡大シナリオでは、作る費用が下がり、従来は採算が合わなかった業務にもソフトウェアの利用が広がると考えます。新しい顧客へ届くには、技術だけでなく販売、導入、教育、継続利用が必要です。製品を作りやすくなることと、多くの人に使い続けてもらえることの間には、なお仕事があります。

価格圧力シナリオでは、似た機能を作る企業が増え、顧客が価格や成果を厳しく比べると考えます。この場合、開発の量だけを売る事業には提供方法の見直しが必要になるかもしれません。顧客の業務知識、信頼、独自データ、運用、販売経路などがどこに価値を持つかを調べます。ただし、これらの資産があるという説明だけで、競争から守られるとは断定しません。

統制重視シナリオでは、AIやデータの利用が広がる一方、誤り、権限、情報の取扱い、説明可能な記録への要求が高まると考えます。この場合には、評価、監視、運用手順、責任分担の設計が重要になる可能性があります。三つは互いに排他的ではなく、業務や顧客によって同時に起こり得ます。企業ごとに、どの条件に事業が依存するかを確かめましょう。

学習用シナリオ起こり得る変化次に見る証拠
利用が拡大新たな顧客と業務へ普及継続利用、導入範囲、成果
価格圧力類似機能が増え比較が厳しくなる価格、解約、提供費用
統制を重視評価・記録・責任分担が重くなる運用体制、顧客要件、事故対応

参照資料:「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるかAzure Well-Architected Framework

内製と外部サービスは組み替えられる

顧客企業が開発の一部を自社で行うようになっても、すべての外部サービスが不要になるとは限りません。共通の基盤、専門分野、運用の体制などを外部から利用する場合があります。反対に外部の製品を採用しても、業務の意思決定や独自の部分は社内で持つ場合があります。内製か外注かという二択より、どの能力を誰が持つかとして考える方が実態に近くなります。

ITサービス会社にとっては、顧客の内製チームと協力する仕事、共通基盤を整える仕事、必要な専門家を提供する仕事など、役割が変わる可能性があります。顧客側の開発能力が上がれば、これまで暗黙だった仕様や品質の説明がより厳しく求められることもあります。支援会社の価値を、単なる人員の補完だけでなく、何を可能にするかで確認します。

キャリアを考える人は、事業会社とITサービス会社を行き来できる技能にも注目できます。業務の問題を整理する、データを扱う、変更を安全に進める、他者に設計を説明するなどは複数の立場で使われます。ただし抽象的な能力だけでは評価しにくいため、実際に何を改善し、どの成果を確認したかという経験と結び付けることが重要です。

参照資料:「DX動向2025」日米独比較で探る成果創出の方向性What is the Cloud Adoption Framework?デジタルスキル標準

見通しは観測できる条件へ書き換える

「AIで伸びる会社」という言い方では、何を確認すればよいか分かりません。「顧客の有償利用が続き、確認や修正を含む業務全体の時間を減らし、提供費用を差し引いても採算が合うか」のように分解します。技術の実証、顧客の採用、継続利用、利益は別段階です。どの段階の見通しかを明らかにすると、後から検証できます。

企業の計画を追う際には、計画の対象期間、顧客、製品、費用の前提を記録します。予定より利用が増えたとしても、基盤費用や支援の費用が増えているかもしれません。逆に売上がまだ小さくても、顧客が使える条件を満たす重要な段階が進んだ場合があります。大きさと進展を分けて見ると、新興企業と大手を同じ表で調べやすくなります。

個人の選択では、業界の成長と自分の興味、技能、働く条件を別々に考えます。人気のある技術に触れられることだけでなく、誰から学び、どの成果物に責任を持ち、どんな利用者の問題を扱うかを確かめましょう。将来を一つに決め打ちするより、複数の状況でどんな経験が役立つかを考えることが、学習と企業探索をつなぐ方法になります。

参照資料:「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるかデジタルスキル標準What is the Cloud Adoption Framework?

安く作れることと安く運営できることは違う

新機能の試作が速くなっても、利用者が増えた後には、監視、問い合わせ、費用、権限、障害、継続更新が必要になります。処理の利用量に応じて外部への支払いが増えるサービスでは、売上と一緒に費用も増えます。開発費の低下だけで将来の利益を説明せず、利用が増えたときにどの費用が増えるかを確かめます。

予測の表には、顧客の継続利用と単価、提供側の処理量と費用、導入と運用の人手という欄を置けます。すべての値が公開されている必要はありません。何が分からないかを残した上で、どの条件なら採算が改善しそうかを考えます。この方法なら、技術の期待を否定せずに事業の条件を具体化できます。

参照資料:Architect multitenant solutions on AzureWhat is the Cloud Adoption Framework?

この章の要点

  • 一部作業の自動化と職種全体の変化を分ける
  • 企業の成長には導入・継続・採算の証拠が必要
  • 見通しは次に確認する条件と一緒に残す

自分の言葉で考える

「AIを使うので成長する」という説明を、検証できる問いに変えてください。

考え方の例を読む

何の業務を、誰に提供し、有償で継続利用され、確認や運用を含む成果が出て、提供費用を上回る対価を得られるかという問いに変えます。

出典と確認時点

統計や企業の説明は、資料の対象時点と確認日を分けて読んでください。

  1. 「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるか ↗情報処理推進機構(IPA) / 公表・対象日:2026-07-30 / 確認日:2026-10-31
  2. 「DX動向2025」日米独比較で探る成果創出の方向性 ↗情報処理推進機構(IPA) / 公表・対象日:2025-06-26 / 確認日:2026-10-31
  3. デジタルスキル標準 ↗情報処理推進機構(IPA) / 公表日の記載なし / 確認日:2026-10-31
  4. What is the Cloud Adoption Framework? ↗Microsoft / 公表日の記載なし / 確認日:2026-10-31
  5. Architect multitenant solutions on Azure ↗Microsoft / 公表日の記載なし / 確認日:2026-10-31
  6. Azure Well-Architected Framework ↗Microsoft / 公表日の記載なし / 確認日:2026-10-31
  7. Shared responsibility in the cloud ↗Microsoft / 公表日の記載なし / 確認日:2026-10-31
  8. History(Unix、C、通信技術の歴史) ↗Nokia Bell Labs / 公表日の記載なし / 確認日:2026-10-31